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MOTORCYCLEFrom Los Angeles PCHのハーレーショップとマイクの生き様。

2011.07.06

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こんにちは、From L.A.コラムのyoshi asoです。
ハーレーダビッドソンのカスタムやエクスポート(輸出)をメインに数十年間、日本のハーレー業界と深い交流を持っていることで知られる西海岸の『Pacific Coast Cycles』。今回はオーナーであるMichael O'Brien(マイケル  オブライエン)の生き様をクローズアップしようと思います。

思いとは裏腹の人生

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マイクの現在の愛車はビッグツインのキットチョッパー。ほとんど乗る機会がないと言うが少しだけファクトリーの周辺を走ってもらった。貴重なショットだ

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ファクトリー内には極上のパンヘッドエンジンとフレームも…。オーダーにより、このほとんどは日本にエクスポートするとか

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カスタマーからのオーダーでモーターサイクルのメンテナンスやカスタムを施すマイク。普段の穏やかさは一変、その真剣なオーラは人を寄せ付けない雰囲気を漂わせる

 ロングビーチとシグナルヒルを境界線とするPCH(パシィフィックコーストハイウェイ)からほど近いエリアにファクトリーがあるPacific Coast Cyclesに初めて行ったのは1年ほど前のこと。今ではすっかり有名なイベントに成長したボーンフリーの会場にあるPacific Coast Cyclesに取材に行った際、オーナーのMichael O'Brienと出会いました。彼は数十年前から日本やドイツ、オーストラリアにハーレーをエクスポートすることをビジネスとしており、日本にだけでも相当数の車両を送り出してきたそうです。
「17歳の時、1955年のパンヘッドをなけなしの給料をつぎ込んで知人から手に入れたのがハーレーと過ごす人生の始まりさ」と語る彼は、20歳の頃にはガレージに住み込み、朝から晩までモーターサイクルをペイントばかりをしていて大病を患ったことがあったそう。「命あっての人生だろ、本来俺がやるべきことは何なのかを考えたさ。そしてバイクで旅に出た。その時に行ったスタージスで本来のオレを取り戻せた気がするよ」
 あるとき偶然にもエクスポートの話がいくつか舞い込み、またいろんな国のカスタマーが彼を訪ねて来るように。最初は言葉も通じない、アメリカの事情(道路や滞在するための知識など)を知らない人達を手厚くもてなして25年間、誠心誠意の対応が喜ばれ「今では不自由のない暮らしができるようになったよ」と笑います。しかし「オレはいつしか魂を悪魔に売っちまったのかもしれない」唐突にそんな言葉を発したマイク。「たくさん上質のパーツを仕入れたり、腕の良いビルダーを雇えるようにはなったけど、自分としっかり向き合いながら、若い頃のようにバイカーとしての熱い気持ちを維持していくのは難しいね。それに上質のフラットヘッドやナックルは、ほとんど他国に流出しちまって、この国にはもうほとんど残っていない。アメリカの財産を自分の手で国外に出してきたことが、良かったのか…」

“Never stop ride”その日があと少しでやってくる。

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もう一台の愛車はチューンド・ポルシェ。「いろいろなモノを手に入れたが、それと引き換えに失ったものもあるよ」と謙虚だ

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20歳代の頃のマイク。貧困と戦いながらも自分を奮い立たせていたという。隣の彼女は別れた元の奥さんだそう

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5回のハートアタックから生き返った男、マイクの笑顔。モーターサイクルに乗る、彼が最も彼らしい瞬間だ

 若い頃の大病が原因なのか、今までに何度か心臓発作に見舞われたマイクは、「『いつ死んでもおかしくない』と噂するヤツもいる」とちょっと寂しげに笑います。「俺が一番好きなのはナックルヘッド。ファクトリーが軌道に乗ってからはコンディションのいいナックルを見つけると手に入れたが、日本や各国のカスタマーからの『どうしても譲って欲しい』というオファーに負けて、何十台も手に入れたはずなのに一台も手元に残っていないよ。極上のナックルなど、この国にはもうそんなには残っていないんじゃないかな…」若い頃は自分のナックルに乗ってスタージスやラフリンに行くのが夢だったそう。「48パンヘッドでは自分の行きたいと思う所へは全部行ったさ。朝起きて乗りたいと思ったら何百マイル先までも気が向くまま走った。そんな風にリラックスして過ごせる日が、もう少しで俺にまたやってくるさ。Never stop rideが俺の信条さ」
 モーターサイクルを純粋に楽しむ時間をビジネスとトレードした数十年を取り戻すためのリタイアが、あと数年先だとマイクは語ってくれました。
 そして彼は唐突に「Let me ask you(じゃ、ちょっと質問させてくれ)」と僕を見つめ、「日本では今、凄まじい災害や津波、原発の放射能漏れが起きている。おまえのファミリーは大丈夫なのか?」と言いました。「実は震災後にある日本のカスタマーが、オーダーしているバイクの支払いが今はまだできないという電話をしてきたんだ。俺は言ったよ。金のことより自分と家族のこと、身の回りのことをケアしろってね。想像してみろよ。今まで培ってきたもの、昨日まで普通にあったものが一瞬で何もかも無くなっちまうことを。恐ろしく悲しいことだよ。どれほどの人が悲しんでいるか。こんな悲劇が起こって、俺は自分の人生をあらためて考えたね」
 病気をはじめ、様々な苦難を経験し、人の心の痛みが分かるマイクだからこその言葉でした。自分のファミリー同然にカスタマーにエールを送る彼がとても素敵に見え、この人柄が多くの人を惹き付けているのだということを痛感しました。

photo&text: Yoshi Aso
http://www.1111garage.com

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