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MOTORCYCLERider's Story on ORM-web 第11回

2010.05.02

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Rider's Story 長篇連載の11回目


前回までのあらすじ...


土屋健次郎のバンドのファンであり、親しい女友達の日菜子が自分に気があることを知った。同時にバンドのドラムのタカオが日菜子のことを好きなことも知った。タカオは次のライブが終わったら、バンドをやめる、と言った。

『自由へ至る 』第11話 主人

文と写真:武田宗徳

「café sea & sky」の開店時間は午前九時。健次郎は、その日朝一番で白い扉を開けた。チリンと音がした。

「涼子さん!」
 
健次郎は声を張り上げた。奥から林涼子が顔を出した。

「あら、健次郎君。いらっしゃい」

「行きましょう」

「え」

「バイク、後ろに乗りませんか」

「……」

「僕が連れて行きます」

「……何を……」

「僕が、どこへでも……」
「そんな、急に言われても」

「外へ行きたくないですか」

「店を空けるわけにはいかないわ」

「自由に外へ出かけたくないですか」

「……」

「行きましょう」
 
健次郎は涼子の手を引いて、外へ出ようとした。

「ちょっと、待って。ちょっ……」
 
涼子は困惑している。健次郎は手を離さず、玄関に向かった。涼子は耐えきれず大きな声を出した。

「主人に殺されるわ!」
 
健次郎は手を離した。涼子は気まずくなってうつむいた。沈黙が続いた。

「涼子さん」
 
健次郎は口を開いた。

「もし、良ければ……僕でよければ話を聞かせてくれませんか」

「あなたに話す筋合いはないわ」

「……できることがあれば何でも言ってください」

「何も無いわ」

「前に言ってましたよね。あなたは鳥かごの中の鳥なんでしょう?」

「……」

「飼い主がその御主人なんでしょう?」
 
涼子の固かった表情が一瞬緩んだと思ったら、いきなり泣き崩れた。顔を両手で覆い、ただ泣いた。健次郎は迷ったがこれが自然だろうと、涼子の肩をそっと抱いた。涼子は体重を健次郎にあずけた。健次郎の肩が涼子の涙で、濡れた。







武田宗徳(たけだ・むねのり)



1974年静岡県生まれ。96年よりモーターサイクル(カワサキ・エストレア)に乗りはじめる。2000年頃よりバイク小説を書きはじめ、02年からは自らの小説による手作りのフリーペーパー、『Rider's Story』の編集・発行、静岡県を中心に配布している。GOGGLEやOutRiderなど雑誌への掲載実績も複数、ON THE ROAD MAGAZINE本誌では06年より小説『Rider's Story』を連載。08年、静岡学術出版より新書『バイク小説短編集"Rider's Story"~僕は、オートバイを選んだ~』を出版。09年、13年以上乗り続けた愛車エストレアが不動となり、09年モデルの同じエストレアを新しい相棒とする。プライベートは夫であり二人の男の子の父。現在静岡県藤枝市を拠点に活動中。



ホームページ:http://www.geocities.jp/mjy_t

ブログ『Rider's Life』:http://www.orm-web.co.jp/blog/riders_life

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